シャンプー


「雷蔵、風呂あがったー」

ドライヤー片手にタオルで髪を拭きながらリビングへ戻ると雷蔵はソファに座って雑誌を読んでいた。長湯をした訳ではないのに暑くてしょうがない。廊下へと続く扉を閉めてすかさずエアコンのリモコンを操作すると雷蔵が雑誌をぱたんと閉じて苦笑した。

「湯冷めするよ。それにまだ髪も濡れてる。風邪引くぞ」
「暑くて無理だ。髪はすぐ乾かせばいいだろ」

延長コードをソファまで伸ばして雷蔵の横に座る。少し奮発して買ったソファは私達のお気に入りだ。深く腰掛けて背凭れに寄りかかりながらドライヤーのコンセントを入れる。髪を乾かすのは面倒で嫌いだが、雷蔵の言う通り風邪を引くのは困る為に仕方がないとドライヤーを持ち上げた瞬間。

「あ、僕が乾かしてあげる」

雷蔵にドライヤーを横から取られた。いつもは頼んでもやってくれないくせに、珍しい。

「いいの?」
「いいよ?たまにはね。ほら、少しそっち向いて」

少し背を向けると髪に温風。人に髪を触られるのはあまり好きではないが雷蔵は別だ。暫く黙って乾かしてもらっていると、不意に音が止み風も消えた。まだ半乾きだと思うが…大雑把な奴だ。まぁいいけど。

「ねぇ、僕と同じ匂いがする」
「そりゃ同じシャンプー使ってるからな」
「ああそうか!だからか」

なにやら当たり前のことを呟いている雷蔵の方を向くように座り直す。コンセントを抜きドライヤーを片付けながら、私の髪に顔を寄せてとても幸せそうな顔をするものだから、愛おしさがこみ上げてそのまま抱きしめてやった。同じ匂いがするなんて、気に掛けたこともなかった。同棲しているうちに当たり前になっていくことを、雷蔵は一々拾い上げて、確かめて、喜んでいる。本当に可愛いと思う。その感性が愛おしい。

「あー、雷蔵かわいい。大好き。」
「はいはい、ありがとね」

腕の中で呆れた顔をしているが満更でもなさそうだ。こいつが風呂から上がったら、今度は私が髪を乾かしてやろう。

「ほら、雷蔵も風呂いってこい」
「はーい」

あー、幸せだ。


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いつかは書きたかったシリーズ!ついに!
一発目は鉢雷でしたー。もうこの2人オフィシャルで相思相愛すぎてつらい可愛い
いつでも雷蔵にべたべたな鉢屋が好きです。
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